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海外における反応重視型の学派

 この分類は、ある学派の研修資料を参考にしたのですが、その資料には様々な学派が『機能の再獲得を重要視する学派』と『位置の改善を重要視する学派』と『疼痛軽減を重視する学派』に分類されていました。

 

 そして、『疼痛軽減を重視する学派』にはMaitlandとCyriaxが載っており、補足としてMcKenzieも該当するとの説明を受け、自分の解釈でMulliganも付け足してみました(CyriaxとはKaltenborn・Maitland・Paris・McKenzieらに徒手療法を指導したとされる医師の一人で、End feelを最初に普及させた人とされています。徒手理学療法の世界では大御所的な人で様々な教本の引用・参考文献としてCyriaxの名前が出てきます)。

 

 また、『疼痛軽減重視』ではなく『反応重視』と表現した理由は、MckenzieやMulliganを受講する中で『痛みのみならず、関節可動域制限・こわばり・異常感覚・めまいなどクライアントの主観的な訴え(反応)を重視し、その訴えをベースラインとした効果判定に重きを置いている』といった印象を受けたためです。

 

 

 

 

反応重視の良い点としては、評価や効果判定がシンプルで分かりやすいということだと思います。

 力学的負荷を加えた際の患者の反応(疼痛や可動域など)で効果判定するため、原因となる組織を厳密に特定する必要が無く、総合的な学派ほどの触診能力が必要無い場合があります。

 これらの事に関して各学派は下記のように述べています。

 

 

メイトランド 脊椎マニピュレーション 原著第7版 より~

 病理はしばしば「ブラックボックス」であるが、苦痛を軽減するために多くのことができる。腰痛治療では徒手理学療法士は「ブラックボックス」からの出力(徴候と症状)を観察し、注意深く、系統的なスキルを加えること(入力)によって、好ましい結果をもたらす。このようなアプローチでは、信頼性のある病理学的データが存在する場合を除き、ブラックボックスの中で何が起こっているかに関する仮説はあまりアプローチとは関係しない。

 

 

マリガンのマニュアルセラピー より~

 もし、正常可動域が失われているときに“SNAGS”を用いたなら、運動制限がなくなるか、あるいは劇的に改善し、痛みが全くなくなることが期待できる。もし運動制限が改善されないなら、それ以上継続するのは時間の無駄である。むしろ別の徒手療法を試してみよう。これらのテクニックの大変良い点は、それが適応になるときにはまさに最初の“MWMS”により改善したことが確認できるところである。

 

※例えば膝関節伸展制限がある患者に対して、lateralあるいはmedial glideで評価して可動域の改善がみられれば、その力学的負荷をそのままアプローチに利用します。その際にlateral方向への動きがhypoであるかhyperであるかなどを評価して手技に用いるかを判断するわけではなく、単純にglideさせた状態で可動域や痛みが改善されるかどうかという『反応』で判断します。そして良い『反応』が得られなければ、その力学的な負荷を治療に利用できない(=非適用)ということで別の力学的負荷を試してみるという事になります。

 

 

~マッケンジーPartA講習資料より~

 腰椎周辺には侵害受容器が広く分布しているので、個々の組織に選択的に負荷を加えるような検査手法は不可能である。

 ある反復運動で症状が軽減・消失・Centralisationが起こった といった所見面での改善が起きたというのであれば、それ以上の反復運動検査は不要である。そして、その動きがマネージメント手段として採用される。

 

 

系統別・治療手技の展開 改訂第2版 より~

 マッケンジー法による診断の利点は、原因組織を特定する必要がないということである。筋骨格系の問題、特に脊柱原性の問題においては、原因組織を特定するのは多くの場合困難である。これは1987年のQuebec Task Forceが指摘してから現在に至るも変わっていない。原因組織の特定が困難にもかかわらず診断名を付けるのは当然無理があり、このことが現在一般的に行われている治療効果を不確かなものにしている一因とされている。Quebec Task Forceは原因組織を特定する診断方法よりも痛みのパターンによって診断を下す方法を推奨している。この考え方は、マッケンジー法の診断法と軌を一にしている。この診断方法ならば、原因組織の特定が困難であるという問題に左右されずに治療方法が決定できる。

 

※例えば、マッケンジー法では評価の段階で体幹の前屈で痛みが軽減できると判断出来た場合、反復屈曲をエクササイズに採用します(例えなので大雑把に表現しています)。

 

 

 

 

また、日本理学療法士協会が発行している理学療法診療ガイドラインにおいても、例えば非特異的腰痛の評価エビデンスに関して下記のような結果がまとめられています。

このまとめからも、『反応を重視した』評価指標(例えば認知度が高いものでいえば、VAS・疼痛誘発テスト)が信頼性・妥当性が高く、セラピストの熟達度に左右されにくかったり、効果判定の基準としても優秀であったりします。

他方で、触診・運動検査といったセラピストの主観にゆだねられる評価指標は推奨グレードC(信頼性,妥当性は不明確であるが,一般的に使用されているもの)と低めで、セラピストの技量もある程度求められる指標だと思います。

※ちなみに筋力評価はセラピストのみならずクライアント自身も変化を実感出来たり、可動域評価は客観的に数値化し易かったりといった意味で推奨グレードBとまずまずで、触診・運動検査などと比べれば効果判定に用い易い指標ということになります。

 

項目 評価指標

推奨グレード

疫学

・疫学、リスクファクター

理学療法士が知っておくべき診断に関する知識

・レッドフラッグ、イエローフラッグ

 

・診断的トリアージ

 

・病歴聴取

 

 

診断画像

・単純X線、MRI、CT、骨シンチ、椎間板造影

理学所見

・疼痛誘発検査

 

・筋力、可動性、TrP、SLR、機能検査、神経学的検査

 

・触診、運動検査、圧痛、筋電図、脚長差

 

 

スケール、機能評価表

・疼痛強度評価(VAS,NRS,VRS,Face scale)

 

・腰痛特異的評価(NDIなど)

 疼痛性評価表(SF-MPQ)

 

・包括的評価(SF-36など)

 

 

 

非器質的因子評価

・精神心理社会的問題

 

・若年者腰痛発症要因

 

A:信頼性・妥当性があるもの      B:信頼性・妥当性が一部あるもの

C:信頼性,妥当性は不明確であるが,一般的に使用されているもの

 

※一部のみの抜粋となるので、詳細は日本理学療法士協会HPの理学療法診療ガイドライン2011の「背部痛」の項目を参照ください。

 

 

 

 

 

 あえて反応重視型で陥りがちな点を挙げるとすると、運動連鎖的な考えが少なく部分的な着目になりがちであったり、この事により即自的な効果だけでなく中期・長期的な効果や影響まで目がいかないことが稀にあるということでしょうか・・・

 

 補足として、『患者の主観的な訴えを重視する』といっても、あくまで『重視』するだけで、その他の客観的評価が御座なりになっている学派ではないということは強調しておこうと思います。

特にメイトランドコンセプトに関しては受講したことが無いため上記文献の分類を参考にしましたが、教本などを読む限りでは評価・治療が非常に体系化されていて、客観的評価も十分なされている印象を受けました。

詳しくは⇒メイトランドの教本参照

 

 

 

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